『トニー滝谷』を観てきた
『トニー滝谷』を観てきた。
切なーい映画だった。
『トニー滝谷』は村上春樹の短編だそうだが、私は読んだことがない。村上春樹の小説はあまり好みでないように思っている。といっても『風の歌を聴け』しか読んだことがないんだけど。『ノルウェイの森』も『ダンス・ダンス・ダンス』も読んでないし最近のなんだっけヒット作…も読んでいない。読んでみてもイイかなと思っている。『風の歌を聴け』を読んだのはたしか10代の終わり頃のことだったと思うので感じ方が変わっているかもしれない。彼のエッセイはおもしろいので好きだ。でもエッセイよりそのイラストを描いている安西水丸さんのほうが好きだったりする。
話を『トニー滝谷』に戻すと、とても静かで淡々とした語り口の映画だった。西島秀俊のナレーションと坂本龍一のピアノ曲も静かで優しい。
何より、独特のアングルとぼんやりした色調が好きだなぁと思った。
ぼんやりした空をスコーンとバックにしたトニー、とか、いーい感じの絵だなぁと思った。湯舟に浸かる絵とか、がらんとした部屋とか、窓から見える夜景とか、服が風になびく英子とか、おしゃれな靴を履いた足元とか。
すごく感じた。人生の空しさとか絶望とか喪失感とかそういうの。とっても救われないんだけど人生ってそんなものかもしれないっていう感じ。少しずつ記憶は薄れゆき、そのとき最終的に記憶に残っていたものが現在、形あるものだったことは、もしかして救いなのかもしれないとも思う。何でしょう、美しくも哀しいものを切り取って観せられたような気持ち。
宮沢りえは綺麗だなぁ。この人はいいこともつらいこともちゃんと消化して大人の女性になったんだろうなと思う。きっと年をとっても美しい女性であり続けるだろう。もしあんな華奢な身体、すらりと伸びた手足が私にあったなら、やはり服を買いまくるだろうと、映画とはまったく違う次元でそう思った。
イッセー尾形は今何歳なんだろう。
初めてテレビで観たのはたぶん20年以上前じゃないかと思うのだが、そのときとあまり印象が変わらない。昔からオッサン顔だった気がするのは彼が演じてきたキャラクターにサラリーマンのおじさんがあるからかもしれない。くるくる変わるキャラクターはお手の物だが、映画の中での学生時代の役はちとつらかった。実年齢より年上の、省三郎の役は巧みだったが。イヤ、でもやっぱり上手いです。
市川準監督の映画は…映画は、と語るほど観ていないが(これ3つめ)、好きだと思う。優しい。哀しいけど、突き放してはいないさじ加減という気がする。
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