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2004.10.13

『父、帰る』

父、帰る』という映画を観てきた。
以下、ほんのりネタバレ含みますのでこれから観る方は読まない方が。


ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞した作品だが、私的にはちょっとなぁ。俳優さんたちの演技はすごくいいの。親子の軋轢みたいなのもいちいち胸に刺さるし。ザラっとした画質やいかにもロシアな肌寒い風景は素朴でいい。けれども、ジメジメ雨降りが多くて滅入ったー。ただでさえここんとこ東京は悪天候でお日さまが恋しいというのにー。
それよりもストーリーにカタルシスが感じられないのがどうにもこうにもこうにもどうも。この映画の本質がそこにないのはわかるんだけど、謎が何も解決しないのは、不粋と言われようと、いやなんです。
すごく伝わるのは弟イワンの気持ち。12年ぶりに記憶にもない父親が急に帰ってきて、パパと呼べって言われてもそりゃ素直になれないって。何の説明も謝罪もなく、子供達を鍛え直すかのように厳しい父。なんでこんなにコミュニケーション下手なの? ってイライラしちゃった。12年の月日を数日で埋めようったってそんな簡単にいくわけがない。イワンに比べ、兄アンドレイの気持ちは今ひとつわからない。イワンより大人だし、要領良くものわかりのいい長男として愛想よく振る舞っていて、父に馴染もうとしてるんだなぁ、気持ちとして父を受け入れているんだなと思ったけれど、実際はどうだったんだろう。殴られたとき、感情を爆発させて言った言葉にやはり内心イワンと同じくらい急な父親の出現に、揺れていたんだと思った。でもことが起こったあと、動揺も見せず、淡々と行動を進めるアンドレイは不可解だった。イワンを思ってのことなのか? ボートが沈んだときも泣き叫ぶイワンと対照的にただ佇むアンドレイの気持ちは…???
父のことは言うまでもなく謎だらけ。子供達への愛は、最後に車にあった写真を取り上げるまでもなく、伝わる。子供達には伝わりにくいが、観客には伝わった。写真で子供達にも伝わったか。ただどこで何してたのか、あの箱はなんなのか、やっぱり知りたい。敢えて語らないのであって、計算されたことであっても、引っ掛かってこれでいいんだ、って思えなかった。
もやもやと曇り空が重くのしかかるような気持ちになる映画だった。あースッキリしたいなぁ。

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