2丁目散歩道
新宿御苑のそばにある友達のバーによく行くので
いわゆる「新宿2丁目」の中心街をよく通る。
馴染みの店はないけれど、
私はここの通りをフラフラ歩くのが好きだ。
なんというか、自由な雰囲気がいい。
なんでも自由がいいと思ってはいない。
電車の中でいちゃつくカップルに
「どっか行け」とか念じることもあるし。
なんかね、普段抑圧されてる人たちが自由を謳歌してるカンジがいい。
ここではそんな小さいこと関係ない、みたいな。
ある夜はごくごく普通のスーツ着た中年サラリーマンカップルが手をつないで歩く姿を、
そしてまたある早朝はお客の背中に罵声を浴びせるドラッグクイーンを見かけたりする。
週末の深夜アドボケイツカフェの前はいつも外国人でいっぱいだ。
ある日いつものようにここを一人で通ると、
地べたに座ってたワカモノ3人に背中越しにこう囁かれたことがあった。
「わ、レズだレズだ」「レズだよ」「レズ」
違います。なんでだよぅ。
確かに私もここをマッチョな二人連れが歩いてたら
組合の人かな? と思うけど、私は一人で歩いてただけだ。
そう、ここはストレートの人だって結構通るのだ。
おいしいと評判のおそば屋さんも多いし。
しかしレズだと言われて否定するのは、
男の人が寄り付かなくなると困るからで
蔑視したりする気はまったくないので念のため。
昔、友人がこんなことを言った。
「俺思うんだけどさ、○くんってホモじゃねぇ?」
私はびっくりしたが、なんとなく思い当たった。
○くんはフリーランス仲間で、物腰が柔らかく、繊細で優しい青年だ。
いつもニコニコみんなの話を楽しそうに聞いている。
おもしろいことも言うし、センスがよくて仕事ができる。
そんな彼とは知り合って何年も経つのに
彼女を連れてくるどころか恋の噂すら聞いたことがなかった。
何度か会う毎に確信し、酔った勢いもあって直接聞いてみた。
「○くんってもしかして男の人が好きなんじゃない?
言ってしまいなよ〜。カミングアウトしたほうが楽だよぉ。
そうだからって私達の友情は何ら変わることはないよ」
○くんは少し驚いて、笑って首を大きく横に振りながら否定した。
否定したけど、でも本当はどうなのかわからない。
しかし、そんなことをおもしろがってみんなの前で聞いたことを今では後悔している。
ややあって、○くんのHPを見る機会があった。
彼の日記には日々のいろんな出来事や、
テレビや映画や音楽の感想が書かれていたが、
どれも鋭い観察力で、実に楽しく、そして時には毒を盛って辛らつに書かれていた。
柔らかい物腰でニコニコみんなの話を聞いていた心の中では
こんなにもたくさんのことを感じ、考え、そして表現に繋がっていたのか。
私は激しく自分の行動を恥じた。
あの日の自分は○くんの目にどう映っていただろう。
とんだ俗物に映ったに違いない。
最近あまり会う機会がなくなってしまったが、
その後も変わらない付き合いを続けてくれた○くんに感謝している。
○くん、土足で踏み込むようなことをしてごめんね。
そのことがあってから同性愛に対する好奇的な気持ちは薄れたように思う。
2丁目を歩く時、たまに思い出す。
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